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捧げ先:ズッキーニ様


※設定お借りしました!
あちらのサイト様の設定をご一読下さい。
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Green Peace…? …運×狙。



 本日も民警の食堂は大盛況だ。
 混雑する人ごみを縫って水を取って戻ったコプチェフは、席に置いていた自分のトレーを見て止まった。

 「……」

 無言で藍緑色の瞳が正面を見る。温い視線を送る中、向かいに座る相手はガツガツと抱えた皿の料理をかき込んだ。
 ただ、ひたすら、一心に。自分の皿を片付けることだけに集中する。白黒の長耳はそれを遂行するべく『何も聞きません』と後ろに向いてしまっていた。

 「……ぼーりーすー」

 呆れたような声は、行儀悪く肘を突いて食べる姿勢にも噛まずに飲み込んでしまう食べ方にも苦言を呈したそうだったが、それよりも、まず。

 「いい加減、人の皿に嫌いなもの移すのやめようよ」

 ことり、と相手のトレーにも水を置いてやりながら、コプチェフは溜息をつく。腰を下ろした席から見る自分の皿には、 席を立つ前まで無かった新緑の粒が小山を築いていた。
 とても体によさそうな、食材の偏った料理が出来上がっている。こんなメニューが取り入れられた日にはこの賑わいを見せている食堂も 潰れてしまうな、と予想できる程度には料理として間違っている。

 「残したら食い物に悪ぃだろ」
 「押し付ける俺には悪いと思わないわけ?」
 「思わねぇな」

 「第一、お前食えるだろ」とのたまう相棒に、コプチェフは首を振ってみせた。ぱたぱた、と一緒に揺れる紫の耳は普段から下を向いているが、一層力をなくしたようだ。

 「食べられるのといくらでも食べるのとはイコールじゃないよ」

 ころころとした球体のより集め―――緑色も鮮やかなグリンピースは一体何粒あるのか。わざわざ選って寄越した相手の、無駄に努力家な部分に乾いた賞賛を送りたい。
 その部分をほんのちょっと、欠片で良いから仕事に見せれば昇進も早いだろう。実力もある彼は、やれば出来る子なのだ。
 最もそうなったらペアでなくなってしまうから困るけど―――ボリスが昇進すれば自分も同じだけ階級を進ませはするが、やはり今の立ち位置が丁度良い。
 助手席に銃を担いだボリスを乗せ、自分がハンドルを握って愛車を走り回らせる仕事の今が、一番充実している。
 例え追う対象に怪物級にハチャメチャな腕力をした赤兎がいるとしてもだ。その過酷な任務すら、彼と居られるなら進んでやろう。

 そんな訳で、コプチェフは嘆息一つ零して諦めたように席へ着いた。
 大人しくグリンピースへと向き合った相棒に、持ち上げた皿の向こうでボリスがニヤリと勝利の笑いを浮かべる。

 ―――なんとでも言えば良い。結果的に食堂のおばちゃんからお叱りの言葉を受けなければそれで。

 「好き嫌いしたら大きくなれないよアンタ!」と次回の皿には更に緑の物体を増量してくれる、温かな思いやりと強制力を持つ相手は気の強いボリスでも流石に突っぱねられない。
 27にもなって大きくなるもならないもないだろ、と口の中でもごもご言って母親のような存在からの愛情攻撃を受け取った先で唸るのは、最早恒例だった。その度、彼は向かいの皿へと食材の緊急避難を行っている。
 偏食気味なボリスに対して、コプチェフはわりと何でも食べる。積んだグリンピースも問題なく消化されるはずだ。

 持ちつ持たれつ―――相棒というのはお互いを補ってこそだ。
 
 向かいの紫の長耳に入れば「都合良い事言うよなぁー」とぼやかれそうな理論を展開しながら、最後の人参を口に放り込む。グリンピースとは比べ物にならない美味な味をさせる物は、コプチェフの皿に自分の分地を乗せる際交換しておいた。これでちゃんと量は食べたのだから誰も文句はないだろう。
 食べ終えた皿をトレーへ置き、ボリスはぱんっと手を合わした。

 「ごっつぉーさま!」

 食事終了の挨拶と共に、ついでにとコプチェフの皿へ残していたピーマンをひょいひょい上乗せさせる。向かいから送られる視線が益々温くなるが、黒眸は見ないフリだ。
 これで皿は完璧完食―――見事に自分の分を食べきったボリスは、まだ食事の済んでいない相棒の手に自分のフォークを握らせた。

 「ゆっくり食えば良いぜっ!」

 ぎゅっと握り込んだ手がニカッと笑う。翻訳すると『あとは頼んだ』となる、そんないい笑顔を浮かべて声弾ませるボリスに、コプチェフはもう何も文句をいう気にならなかった。
 大人しくフォークを受け取り、ぶすり緑の粒を突き刺す。別に嫌いなわけではないが、こうも緑の集合体にされてしまうとなんだか食欲が減退する。ボリスが言ったからではないが、自然食べるペースはゆっくりになりそうだった。

 食事を楽しむ様子なく、黙々とフォークを皿と口との間で動かすコプチェフを満足そうに見て、ボリスは席を立つ。
 時間がある時はいつも射撃場へ行くようにしている。時間ある限り、訓練をすること―――公言することも自認することもないが、スキルに関しては努力を惜しまないタイプなのだ。
 特に今追っている赤い悪魔はロケットランチャーさえまともに効かない。本当にあの化け物どういう構造してやがるんだ、と滅多に味わうことのない敗北を相棒共々に喫した彼は日夜闘志に燃えていた。
 次こそ、コプチェフと一緒に捕まえてやる―――抱いた決意は、強い。

 「じゃ、俺先に行ってる」
 「はいはい……」

 足早に席を立つボリスを、置いていかれる形のコプチェフも止めない。相棒がどんな気持ちでいるのか、一番良く知っているのは自分だと自負できる。

 そういうところに惹かれているからこそ、どれだけ無愛想にされようが嫌いな食材を押し付けられようが、共にいるのだ。

 やっぱり早く食べてしまおうと運ぶ手の速度を上げたコプチェフはふと、脇を抜けようとするボリスを掴んだ。
 引き止める手にトレーを持っていたボリスが「なんだよ」と振り向く。その「な」の発音に開いた口へ―――口先に乗せていたグリンピースを、押し込む。

 「―――!?」

 ごくんっ、と飲み込む音。咀嚼する工程を抜いて聞こえたそれは相手がどれだけ慌てているかの心情を表すに相応しい。
 白黒の耳を跳ね上げさせた相手に、席に座ったままのコプチェフがにっこりと笑った。

 「一粒くらいは、食べて行こうね」
 「ばっ―――!」

 詰まった声は一瞬―――苦手な食材の味すら分からないまま、顔を真っ赤にさせたボリスの上げた罵声が、まだ賑やかな食堂へと轟いた。



 勿論、射撃場に行くまでもなく動く的1体をターゲットに実弾演習が行われたのは言うまでもない。

 



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2010.6.6.
『時とともに』のズッキーニ様へ恐れ多くもバシンッ!と叩きつけてしまいました……すみません~!
ズッキーニさんの描かれる狙があまりにも可愛くて、つい漫画の『夕飯』を使わせてもらいました。
運も鼻血を(見てる側も)流すほどに可愛いのです!が、自分がやると腹黒くなりました……紫兎様に土下座。
正しい運狙をお求めの方は上のバナーからズッキーニさんのお宅へ!耳まで可愛らしい天然な運狙が溢れていますよ!!
ズッキーニさん、ありがとうございました!