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※注意※
 ・緑×双子です。
 ・緑×双子 です。
 ・お下品です。




































 「犯らせて下さい。」



 ペコリ。

 そんな音が聞こえそうなほど、丁寧に下げられた頭をキレネンコとキルネンコは見下ろす。
 天辺で一つ括りにしているフサフサの髪が、二人に向けられている。手はきちんと前に揃え、膝も床についた状態―――所謂、土下座。
 世界でも有名なジャパニーズ作法を取るプーチンに、各々赤い瞳が瞬く。

 「……シたいのか?」
 「違います、犯りたいんです」
 「……ヤりたいのか」

 兄弟はふむと思案した。

 プーチンが性行為に関して、意見するのは珍しい。
 というか、今まで皆無だった。元々年齢割合に性欲は薄いほうのようだったし、閨事を匂わせるよう仕向ければ真っ赤になって縮こまる。口癖は「ダメ」で、自ら「欲しい」とねだるのはよほど追い詰められ、理性飛んでしまってから。今まで二人が相手してきた女達のように『お誘い』を手管として見せるなど、想像はしても現実に実行される可能性はゼロパーセントに等しかった。(まぁ、二人からすれば恥らっている平時が既に誘っているようなものなのだが、)
 その奥手なプーチンが、自分から事を所望している。
 悪くない相談だ―――些か言い方がストレートだが、幾重もオブラートに包んだ回りくどい口説き文句を言われるより分かりやすくて遥かに良い。どんなに綺麗な比喩用いても、要はセックスしたいという事なのだ。そしてそれは、別に恥ずべき内容ではない。
 よって、キレネンコ達も特に頬を染めるでもなく、あっさり承諾する。まだ陽は高いが、関係ない。男とは性欲に従順な生き物であり、可愛い恋人が欲している以上それを与えないのは男が廃るというもの。ヤりたいというなら、幾らでも付き合おう。
 が、抱き寄せるべく伸ばした二本の腕に、プーチンは捕まらなかった。土下座のままサッと半身引き、「違うんです」と深く垂れた頭を振る。


 ―――違う?

 ―――何が?


 目線だけで問いかける二対の赤を前に、プーチンが顔を上げる―――どちらかというと実年齢より下に見られる童顔をキリリ引き締め、深緑の双眸に一点の曇りもなく。



 「二人を、抱きたいんです」



 本気の眼差しで、言い切った。







 

もっと愛し合いましょ? -今日から下克上!-

 





 時が止まった。


 そう錯覚しても不思議でないほど、誰も動かなかった。声もしない。
 無表情のキレネンコとキルネンコは元より、じっとするのが苦手なプーチンでさえも。誰一人として、動かない。


 一旦情報を整理しよう。
 最初、プーチンは「ヤりたい」と言った。ゲームや料理を行いたいという事ではなく、あくまで、性的な意味で。
 だが、改めてヤル意思を確認すると、これには「違う」と答えた。


 違う、ヤりたいんじゃなくて、犯りたいんだ、と。



 抱かれたいのではなく、『抱きたい』のだと―――



 「「…………」」

 空耳か。空耳だ。そうに違いない。でなければ単にプーチンが発音し間違えているのか。少なくとも、額面通りの内容ではあるまい。

 一般的に防衛本能と呼ばれるものを発動させた二人は、無言のうちに気のせいで片付ける。何、ちょっとした気の迷いだ。アッチだってすぐに忘れてコサックダンスを踊り出す。
 何事もなかったかのよう硬直解き、席を外そうとする。その足を、プーチンがガッ!と掴んだ。

 「抱きたいんです!キレネンコさんとキルネンコさんを!!」

 高いソプラノトーンが反響する。耳から脳まで揺るがせる嘆願は流石に聞き違いの類ではなく、強い意志持ってのものだと分かる。
 「お願いしますっ!!!」と再び頭を下げるプーチンに、片足縫い止められたキルネンコが顔を顰めた。

 「……何の冗談だ、」

 仕方なく、といった風に口動かす彼は、まだこれが悪ふざけの類だと思っている節がある。
 若干強めに睨む目に、プーチンは怯まず反論した。

 「冗談は言ってないです。
 僕、いつも思ってたんです―――二人ともすごくカッコいいけど、それと同じくらい美人だよなぁ~って。
 睫は長いし、腰も脚も細いし。傷痕はあるけどお肌なんかスベスベだし。
 見てるだけでドキドキしちゃうくらい綺麗なのに、何で、僕ばっかり、その……される方なのかなぁって」
 「別に、問題ない」

 ズボンの裾をモジモジ引っ張るプーチンへ、キレネンコはボソリ呟く。
 そう、問題ない。先程プーチンが言った誉め言葉(?)は昔から誰彼となく囁いてきた事柄ではあるが、二人にとってそれは別段嬉いことでもなんでもない。手入れだって全くしてないし、生まれつきなだけだ。
 ついでに、『優美』ではあっても、『女々しく』はない。性格も非常に漢らしい自分達だから、然るにベッドの上でだって当然、男のポジションへ納まるべきだと彼らは認識している。
 その点、プーチンは男にしては小柄だし、顔立ちも体つきも程よくほにほにしていて可愛らしい。癒される。率直に言うと、兄弟の「抱きたい」という欲望を掻き立てる。
 プーチン自身最初からさほど抵抗なく受身になったし、反応だって悪くない。

 お互いに納得の上で、且つ、理に適っているのに。問題など全くあろうはずもない。


 暗黙の了解事項だと思っていたそれはしかし、床を叩く音で脆くも打ち砕かれた。


 「ありますよ!とぉーーーってもありますっ!!!第一そのイメージからして大問題です!
 どうして僕が可愛いって決め付けられてるんですか!?」
 「……見た目と、性格」
 「そんなの偏見です!曲解です!ごく一部の認識なんです!
 他のトコの僕はとっても格好良いのに!凛々しい顔立ちだったり、背だってすっごく高かったりするのに!腹黒かったりもするのに!
 なんでココの僕は童顔でちっちゃくて天然キャラなんですかっ!!!」
 「言ってる意味はよく分からないが、落ち着け」
 「落ち着いてなんてられません!!!
 この際だから言っちゃいますけど、本当の僕はキレネンコさんを肩車したりしちゃうんですよ!?足元映ってないけど脳天微妙に越してるんですよ!?証拠写真だってあるし!
 なのにそれを可愛いと華奢だとか可愛いとかプニプニとか可愛いとか可愛いとかっ……もー!もぉーーーっ!!!」


 (……キレた)
 (……キレたな)


 バンバン床を叩いて激昂するプーチンに対し、『でも、迫力はないな。』とそれぞれ頭の中で思う。

 そんなこんなで、上げ連ねられる不満を聞くこと数分間。

 立ち去るわけにもいかず、とりあえず右から左に流していた二人へ、漸く一通り言い終えたプーチンが顔を向けた。
 キッと鋭い目する表情から普段の大人しさはすっかり吹っ飛び、気迫さえ漂わせている。
 若干たじろぐ双子達に構わず「兎も角!」と彼は叫んだ。


 「僕だって、男なんです!!!」


 というわけで、今日は僕が二人を抱きます。


 ビシリ挙手しての宣誓。異論も質問も認めない、見事なまで堂々とした一方的なタチ宣言。最初が拝み込む構えだったのを思うと、飛躍的な進化だ。意見を譲らない双子はどうせ弱腰な迫り方をしても聞きやしないのだから、それくらい強気でいかねばなるまい。
 しかし、対するキレネンコ達もすぐには頷かない。むしろ、頷きたくない。

 考えてみてほしい―――今の今まで完全に抱き、啼かせる存在と思っていた対象が、いきなり尻を貸してくれと催促してきたら。
 本人幾ら否定しようとチビで肩幅もなく、プニプニで柔らかな頬緩め愛くるしい笑顔見せる、そんな最愛の天使が漢の顔して「やらないか」なんて言い出したら。

 はっきり答えよう。却下だ。

 絶対的に有り得ない。恋人の頼みだとかそんなの関係なしに、反対だ。断固拒否。

 声に出さず意見を纏めたキレネンコとキルネンコは、揃ってNOの返事する―――その前に、プーチンが口を開いた。
 まるで、予め断られるのが予想できていたように。彼の持つ、最強の切り札かざす。


 「もし、ダメだって言うなら―――」




 二人が、どうしても抱かせてくれないのなら、




 「カンシュコフさんに、抱かせてってお願いしに行きますから」


 「「…………」」










 「……どうするんだ」
 「…………知るか」

 向かい合った、鏡映しな顔。眉間へ立てた皺の本数までそっくり同じ容貌で顔寄せ合った兄弟は聞こえないよう溜息を吐いた。
 後ろではプーチンがわくわくした面持ちで二人の答えを待っている。その胸中はきっと、期待と興奮で高鳴っているのだろう。なんといっても、取り方によっては『初夜』なのだから。だが、同じく初めての経験迫られている二人には頭の痛い問題でしかない。
 正直、断る以外の選択肢は存在しない。だが言ったが最後、傷ついたプーチンは泣きながら昔馴染みの某看守の元へ走ると言う。叶わない想いと知って尚プーチンに未練残す相手だ、乞われれば足くらい開くかもしれない。「最初は、ゆっくり……」なんて、お互い経験の少ない同士ぎこちなくコト進めるのかも。それは、容認出来ない。

 どんな状況に置かれようとプーチンは自分(達)のモノ。他の男が挿れるのも、挿れられるのも、あってはならない。

 なら、大人しく抱かれるのか。改めて自問するものの、やはり素直に身を任せるとは言い出せない。ムムム、と更に柳眉が寄る。

 「……お前、ソッチ[犯られる側]でも平気だろ」

 唸る隙間からキレネンコが一手、踏み込む。
 途中生き別れたとはいえ、親の腹に居る間から一緒だったのだ、相手の性遍歴だって良く知っている。
 あわよくば、一人で相手させよう。そんな相手の魂胆見え透いた前振りに、キルネンコは至極嫌そうな顔して見せた。
 まぁ、今まで全く受けたことがないわけではない。基本気持ち良ければ何でもアリなキルネンコは上下にさほど拘らない。あえて優位に据えてやった男を玩び、心身とも屈服させるのは単純に肉体征服するのとまた一風異なる快感が得られる。それはそれで、面白いと思う。
 あと溜まっているけど抱くのが面倒で、手っ取り早く派手に発散したい時なんかにも都合が良い。性感が増す分俄然こちらというネコ派の主張も分からないではない。
 一応考えるよう首巡らせる。途端、背後のエメラルド級に輝く瞳を見たキルネンコは、即座「無理だ」と断言した。

 「あんなぽやぽやしたヤツ相手、無理がある。プレーリードッグに掘られろって言ってるようなもんだぞ」

 或いは、チワワか。自他共に百獣の王と評す彼が悪知恵さえ持たない小動物に突っ込まれるのは、本来の主義に反してしまう。楽しさが何も、見出せない。
 両刀なキルネンコでさえお手上げなのだから、ガチタチのキレネンコなど言うに及ばず。

 そもそも、精神的にもかなりキツイものがあるが、肉体的にどうなのか。無理がないか。
 具体的に己の知っているプーチンのを想像してみる―――受け入れるのは楽かもしれないが、果たしてそこから先機能するのか。
 甚だしく失礼な事を考えつつ、記憶を確かめるように二人はそっと現実のプーチンを窺う。


 ―――次の瞬間、額がぶつかる勢いで顔接近させた。


 「…………今、何か見えたぞ」
 「………………………………」

 顔の色変えるキルネンコに、気のせいだ、とキレネンコは言った。だが、その声は聞き返さなければならないほどに掠れている。
 振り向いたキレネンコ達の目に飛び込んだモノ―――二人が相談している間に準備しようと考えたのか、とても上機嫌にベッドへ行ったり来たりするプーチンの後ろ姿。

 その小さな手が、通常人前で軽々しく口にしてはならない名称の品を握っている。

 素材は主にシリコン。色はどぎつめ。ついでに形状は長かったり太かったりイボイボだったりまちまち。
 俗に大人の何とやらと呼ばれるそれらを、二人はよく知っている。他でもない自分達が用意したからだ。
 勿論、道具なんか頼らずともプーチンを悦ばせる自信はある。自分の腕(というか、アレ)が有れば十分だ。
 だから実際には全部未使用で、機会があればそのうちに、とずっと秘密の場所へ仕舞いこんであったのだが。

 「ベッドの下なんて、分かりやすい所に隠してんじゃねぇよ……!」
 「……一番見つかり難い場所だ」
 「馬鹿か、お前昔っから物隠す時はあそこに突っ込むだろうが」

 モロバレなんだよ、と怒り露な目でキルネンコが睨みつける。ブツを隠す役目はキレネンコへ一任していたが、失策だった。ベッド下の空きスペースといえばいかがわしいアレコレを隠す定番の場所だと、どうして気づかないのか。同じ屋根の下暮らしているプーチンにバレないなずがない。
 多分、掃き掃除でもしている時に気づいたのだろう。言えばやぶ蛇になるから見なかったことにしただけで。まさかこの日のために知らないフリしていたわけでは―――ないと思いたい。

 「―――責任取れ」

 馬鹿の一つ覚えのように押し込んでいたお前が悪い。痛烈な批判浴びせる代わりに、体で贖えとキルネンコが糾弾する。
 隣から向けられる厳しい声に、キレネンコは何で自分が、と反論した。「買ってきたのはお前だ」と片割れが妖しさ満点の袋を提げて来た日のことを指摘する。
 押し付けてくるから仕方なく場所貸してやったのだ。責任というならむしろ、持ち込んだそちらにあるはず。

 「お前だって乗り気だったじゃねぇか」
 「勘違いするな。俺はあんなの必要ない」
 「ウソつけ、気に入ったヤツさり気に寄り分けてたクセして。黒色の、一番サイズのデカイやつ出しただろ」
 「……それを言うなら、そっちだってピンクで丸が繋がったような趣味の悪いのを選んでた」
 「素人考えで物を言うな。段差があるほうが使って感じるんだよ」
 「見た目最悪だ。入れるなら、普段のに近いストレートのが良い」
 「そっちのだって十分グロテスクだ、変態」
 「何だと……」



 「二人とも、決まりましたかー?」


 「―――!」



 いつの間にか白熱していた話し合いは、脇から挟まれた声に瞬間静まり返った。弾むような、無邪気ともいえる愛らしい声。普段聞けば頬の一つでも緩んだろうが、今は逆、顔の筋肉が激しく引き攣る。
 互いの襟ぐりに手をかけたまま、水でも浴びたように固まる二人―――いけ好かない鏡写しの顔とずっと向き合っていたいなんて思ったのは、生まれて初めてかもしれない。
 けれど、後ろから呼び立てる声をいつまでも無視するわけにはいかない。

 ゆっくり振り返ったそれぞれの赤眼、そこに満面の笑みを浮かべるプーチンが映る。


 両手へ、奇しくも先程彼らが口にした玩具を携えて。


 「さあさ、どっちから先にシます?僕としては二人一緒とかでも全然構わないんですけど~」


 むしろその方が犯りがいがあるっていうか?


 爽やかに告げるものの、内容と手に持っているモノのせいでまるで台無しだ。害も悪意もない笑顔でさえ、二人を慄かせる材料でしかない。
 最早どちらかを犠牲にして逃げようなんて発想さえ湧かず、お互い縋るよう身を寄せ合う。
 過去から現在まで最強の名を欲しいままにするロシアン・マフィア頂点の双子の逃げ腰など人に知れればとんだゴシップだが、そんな事どうでも良い。
 第三者の介入によってこの場が切り抜けられるなら、喜んで記事を提供しよう。


 だから、だからそれだけは―――


 真紅の髪に包まれた顔を真反対の色へ染めるキレネンコとキルネンコに、プーチンが近づく。
 一歩、また一歩。震える恋人達に静かに歩み寄った彼はふんわり、慈愛溢れる表情で―――微笑む。



 「大丈夫です。優しくしますから―――





 だから、もっと愛し合いましょ?」





 



――――――――――
2012.04.01
続きません。