作者様:
緋柳 涙様:桜魔ヶ時

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彼はある意味犯罪者




午後6時、アイツはきっと休憩時間。

電話が鳴る。

1コール、2コール、3コール

「…もしもし」

『おぅ。お前まぁたすぐ取らなかったろ』

「悪いが忙しいんでな」

嘘。仕事はとっくに片付けている。
電話の向こうでも分かっているとでも言いたげに笑う声。

『はいはいごめんな。んなに忙しけりゃ電話週一に減らすか?』

ぴくりと受話器を持つ指が震える。半分位本気で言ってやった。

「浮気してやる」

すると途端に焦る声。

『だぁー!もう、素直じゃねえなぁ…冗談だよ、そうむくれんなって』

あの白が混ざる金髪をガシガシと掻く様がありありと浮かぶ。

「…次そう言ったらもう二度と連絡取らねぇから」

『だから悪かったってば。で、お前ちゃんと寝てるか?飯は?怪我とかもしてねえよな?』

電話する度確認される事項に、思わず笑みが零れた。

「アンタは俺の母親か?大丈夫ですよラディお母さん」

『おか…?!お前、人が心配してやってんのにその態度…!』

「クク…間違ってはいない気がするけど?」

『…ッまあいい。元気そうで何よりだ。そういや俺…『オイ一番目!!』』

唐突に電話の向こうから別の声が届く。
確かロウドフって呼ばれてる女。

『あぁ?何だよロウドフ!今忙し『黙れ、また囚人番号073が暴れているんだ、貴様も止めるのを手伝え!!』』

073?確か麻薬中毒者だったな。

よし、後で暗殺依頼出すか。

『あぁもう、悪い一旦切るぞ!』

「…あぁ」

 ガチャッ

 ツー‥ツー‥










午前2時。
そろそろ寝ないとな、とベッドに入った途端に電話が鳴る。

1コール

間違い電話?いや、ここの番号は他と間違わないよう細工がしてある。

2コール

緊急の連絡か?いや、それなら屋敷の部下を通して来るようにしている。

3コール

まさか、アイツは夜も巡回がある。

4コール

慌てて受話器に手を伸ばす。

5コール

「…もし、もし」

『あはは…ごめんな、寝てただろ』

つい8時間前も聞いた声が申し訳なさげに鼓膜を震わせた。

「何かあったのか?」

『いや、話の途中で切っちまったからよ…俺、明日…もう今日か。仕事休みになったんだ』

「は?」

『ゼニロフに監獄の電話料金が半端ねぇから、話したいなら行って来いって言われちまってよ…つーわけで、これから向かってもいいか?っても着くのは昼だけど』

「…わざわざ、その為に電話したのか?」

俺が言うのも何だが、人の迷惑になるとか考えないのかコイツは。

『ああ。突然行くのも悪いかと思ってな』

…迷惑の基準が違っていたようだ。
呆れて何も言えないでいると「それに」と続けた。

『いつもの、言いそびれてたしな』

「は?」



『おやすみ、キルネンコ…良い夢を』



 ガチャンッ

力一杯受話器を戻す。
声を受け取った耳が異様に熱かった。
その場にへたり込む。


「いつも、言ってないだろ…!」


繋がっていないと分かりつつ放った文句は、情けなく震えていた。




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2012.03.07
『桜魔ヶ時』の緋柳 涙様がひなまつりフリーとして配布していたssの看桃!
キル様可愛っ…!至上稀に見るツンデレですよふてても照れても超可愛い!!
ムダメンでオトメンな看桃、ご馳走様でした!


↓素敵な緋柳さん宅はこちらから!
桜魔ヶ時