作者様:
緋柳 涙様:桜魔ヶ時

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甘い冷戦を始めよう




「あったかい色なのに、冷たいね」

背中から緩く抱き締めてくる骨張った手が戯れに頬を撫でてくる。
頭を広い胸に預けて笑った。

「…そういうお前は、死神みたいな見た目のクセに体温高いよな」

「うん。よく言われる」

「…『よく』?」

少し引っかかり、見上げて問う。
どこか虚ろな灰色の瞳が見下ろしてきた。

「うん。カンシュによく言われる」

「カンシュコフ…?何で」

自分でも分かる程声のトーンが落ちる。
言葉を向けた対象は気付いているのかいないのか、変わらぬ平坦な声で答えた。

「最近よく会う…カンシュも冷たいから…あっためる」

「………」

「?ッ…痛たたっ…!」

長い髪を思い切り引っ張っる。

面白くない。

コイツが…ショケイスキーが他の奴もこうして抱き締めているのかと考えるだけで腸が煮えくり返る。

「…禿げ上がれ」

「?なんで…?痛いよ…」

「鈍いお前が悪い」

「???」

痛がるショケイスキーを無視して尚髪の毛を引っ張っていると、涙目で顔を近付けてきた。
髪が周りに落ちてきて、文字通り視界がショケイスキーで一杯になる。

「痛いってば…」

「………」

「もう…しょうがないなぁ…」

苦笑したショケイスキーが両手で頬を包んで俺の喉が反る程上を向かせた。

「んッ………!」

意図せず声が上がる。

「フフ…誘わなくても…あげるよ」

そんな甘い言葉と共に、唇が近付いた。

だが。

「ぁ………?」

温もりを感じたのは額。

距離が出来て見えたショケイスキーの表情は、彼にしては珍しいイタズラっぽい笑顔。

「この体勢じゃやり辛いから…ここでガマンして?」

「………てめぇ…」

この俺を手玉に取ろうってか?

腕を振り払って向かい合う形になる。

「悪いが、その程度でおねだりする程ウブじゃないんだ」

仕返しにと鼻先を軽く舐めてやった。
すると何故かショケイスキーの笑みが深まる。

「うん。強気な君が好き」

「ッ!!」

「綺麗な色の君が好き。
体温の低い君が好き。
甘えん坊な君が好き。

嫉妬してくれる君が好き」

間近で真っ直ぐな言葉をぶつけられ、顔が熱を持つのが分かった。

「やめろ…つか…嫉妬してるって分かってやがったな…」

「うん。可愛かったよ?」

「………」

何だ、この敗北感。

俯いていると、頭を撫でられた。

「おにーさんに駆け引きで勝とうなんて、百年早い」

「もうオッサンじゃねえか…」

ぼそりと呟くのは所謂負け惜しみ。ショケイスキーも分かっていてただ笑うだけ。

「ねぇキル、顔上げて?」

「………」

「さっきの続き、してあげるから…ね?」

「ッこの…天然腹黒…!」





本当に、百年経っても勝てる気がしない




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2012.03.07
『桜魔ヶ時』の緋柳 涙様がひなまつりフリーとして配布していたssの処桃!
キル様より上手を行く処刑さんGJです!焼いたり甘えたり強気に出て負かされるキル様実に可愛いですよっ…!
一段と大人の処桃、ご馳走様でした!


↓素敵な緋柳さん宅はこちらから!
桜魔ヶ時