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作者様:『World's End』 月影 眞様


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 12月も半ばを過ぎ、寒さを増した街は新年とクリスマスを迎える準備で大忙しだった。

 広場に立てられた大きなヨールカ。たくさんのオーナメントとイルミネーション。
 その隣にはヨールカと同じくらい大きなジェット・マロース。
 路上ではクリスマス商品を扱う店が軒を連ねている。

 そんな、何時になくキラキラと光り輝き騒がしい街中を、大きな紙袋を両脇に抱えプーチンが一人歩いていた。


 「ちょっと買い過ぎちゃったかな?でも、キレネンコさんたちと迎える初めての新年だし…」


 などと、買い過ぎてしまった荷物の言い訳をしながら、ヨイショと荷物を持ち替えると、紙袋の中からコロコロと買ったばかりの真っ赤な林檎が転がり落ちた。

 「あっ、ま、待って~僕の林檎~」


 プーチンはコロコロと転がる林檎を追いかける。
 そんなプーチンにはお構い無しに林檎はコロコロと転がり続け、誰かの靴にコツンとぶつかり動きを止めた。


 「あ!すいませ~ん。それ僕の林檎で~す!!」


 荷物に翻弄されながらプーチンが駆け寄ると、その靴の持ち主が林檎を拾い上げてプーチンに差し出した。


 「何、荷物に遊ばれてるんだ。連れはどうした?」

 聞き覚えのあるその声音が、プーチンを見下げ呆れたかの様に溜め息をつく。


 「キルネンコさん!」

 プーチンが荷物の隙間からチョコンと顔を出すと、そこには良く見知った赤い人が立っていた。

 「アイツはどうした?お前一人で買い物か?」

 「キレネンコさんは寒いからって、家でお留守番してますよ。キルネンコさんはお仕事ですかー?」

 プーチンは拾ってもらった林檎をゴソゴソと袋にしまいながら、『こんな寒いのに大変ですねー』とのんびり答える。


 「これでヨシっと、キルネンコさんありがとうございます」


 林檎をしまい終えたプーチンが、ペコリと頭を下げて微笑む。その頬と鼻先は、まるで先程転がり落ちた林檎の様に真っ赤だった。


 『それじゃ、僕はこれで』と立ち去ろうとするプーチンの腕をキルネンコがガシッと掴んだ。


 振り返る瑠璃色の瞳がキョトンと、不思議そうにキルネンコをみやった。


 「そう急ぐこともないだろう。茶くらい付き合え」




 キルネンコに連れられてプーチンが訪れたのは近くのカフェテラス。


 店内は買い物途中の家族連れやデート中の恋人達、寒さを少しでもやり過ごそうとする人達で埋まっていた。

 そんな中、プーチンたちも空いている席に腰をかけ、キルネンコが近くのウエイターに注文を告げる。

 そんなキルネンコを見てプーチンが、ふふ、と笑う。それが釈に触ったのかキルネンコの赤い瞳がプーチンを睨みつけた。

 「あ、ごめんなさい!何だか、キルネンコさんと二人でお茶を飲むなんて不思議だなって思って」

 そう言ってまたプーチンはふふ、と笑みを零す。

 何がおかしいのか笑い続けるプーチンに、さすがのキルネンコもほんの少しだけ口許を緩めた。

 運ばれてきたココアを飲みながらプーチンは店内を見回す。ここも外に負けず劣らず、新年やクリスマスの飾り付けがされている。

 そんな中、どこからともなく聴こえてきた子供の歌声。

 その声につられる様に顔を動かすと、入口付近のカウンターで小さな双子の兄弟がクリスマスの唄を歌っていた。


 歌い終わった兄弟は、近くにいた客達から何かを貰っている。


 それに気がついたプーチンが目を逸らそうとすると、清んだブラウンの瞳とかちあった。するとその双子の兄弟は、迷うことなくプーチン達の席へと歩み寄り唄い出した。



 ――家畜小屋にキリストが生まれました。みんなは嬉しくなります。この1年、皆さんが豊かになりますように!と…



 プーチンはこの兄弟が何をしているのかわかっていた。だから目を逸らした。ロシアでは珍しいことではない。これは伝統行事だと頭ではわかっている。
 けれど―――


 唄い終わった双子の兄弟がプーチン達を見上げ『少しでいいのでお金を下さい』と言う。

 プーチンがポケットからお金を出そうとすると、キルネンコがそれを止めた。そして兄弟に話しかける。

 「おい、ガキ…」

 地を這う様な声音に双子の片割れの肩がビクリと震えた。もう一人の片割れはキルネンコの声に臆することなく、その赤い双眸を睨みつけている。

 その片割れの瞳を暫く見つめたキルネンコは、上着のポケットに手を入れた。

 そして取り出した硬貨を双子の掌に、一枚、二枚と置いていく。

 「これはお前らが、唄を歌った報酬だ。受け取れ」

 そう言いながら、残りの硬貨をジャラジャラと小さな掌に落とした。


 兄弟は渡された硬貨とキルネンコの顔を何度も見返す。

 キルネンコはもう二人に用はないと言わんばかりに冷めた珈琲を啜り「早くどこかに行け」と呟いた。

 双子の兄弟は何度も頭を下げ、店の外へと駆け出す。そして大きな声で「ありがとう!」と叫ぶ。

 キルネンコはそれを鼻で笑い、また珈琲を啜る。


 そんなキルネンコを見てプーチンは微笑む。


 「キレネンコさんって意外と優しいとこあるんですね。って、痛い!ちょ、蹴らないでくださいって!痛いですってば!」



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(聖なる夜に)



(昔の俺達みたいだったなど、口が裂けてもコイツには言えないな)



 





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2010.12.18
『World's End』の月影 眞様がX'masフリーで配布されていたので頂いて参りました!
ぎゃー!弟緑デート!!キル様が滅茶苦茶格好良いですっ……!キルは善人ではないけど、常に正当な評価を下してくれますよね。
相手が子供だろうとそれは同じで、同情したりしない代わりに頭から侮ったりもしない。相手の本質が自分の認めるレベルであればちゃんと一人の人間として扱う。
それはキル自身が甘えを許さない、強い誇りを持って生きているから。人の価値がどこに宿るか知っているから、彼は目を逸らさない。誰よりも高い信念と矜持を備えているからこそ、自分に自信持っているしマフィアの首領としても絶対の地位築いている。
……とか、勝手に妄想してすみません。(土下座)でも作中のストイックなキル、本当に理想のままなんです……!
そして勿論プーも!荷物にも遊ばれてるって……くっ、なんて可愛いんだ!!!照れてるキルも有る意味可愛いですけどねー!(笑)お、俺も蹴って下s
いや、本当に幸せ絶頂です……月影さん、心温まるクリスマス・プレゼントありがとうございました!!!


↓素敵な月影さん宅はこちらから!