作者様:『World's End』 月影 眞様


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С НовЫм Годом  (ス ノーヴィム ゴーダム)

 雪がちらつく深夜。街は賑わい、人は浮かれ騒ぎ出す。


 そんな喧騒の中、行き交う人々を呆れた顔で眺める一人の男。

 燃えるような赤髪にルビーのような深紅の瞳。顔に走る傷痕を差し引いても精悍な顔立ちは、良くも悪くも人目を引く。

 チラチラと覗き見る人々の視線を鬱陶しそうに一瞥し、その男、キレネンコは持て余し気味の長い手足を組み壁にもたれ掛かった。

 視線の先には人混みに紛れてはしゃぐプーチンの姿。その姿を見てキレネンコは、深い、深い溜め息をつく。


 ここは北西から南東に長く、南西側にはスターリンや片山潜などが眠るクレムリンの城壁。北西端には国立歴史博物館とヴァスクレセンスキー門、南東端には葱坊主の屋根の聖ワシリイ大聖堂がそびえ立つ。


 そう、キレネンコがいるのは、まさにそれらが見渡せる赤の広場。そしてこの人混みは、カウントダウンで新年を迎えようとする人々の集まり。


 しつこいようだが、キレネンコは年間行事や祭事などに興味はない。煩いのも煩わしいのも嫌いだ。ましてや人の集まる所に来ることなど、有り得ない。

 それでもキレネンコがここに来たのは、あの瑠璃色の瞳を持つ同居人からの"お願い"だったから。


 吸い込まれそうな瑠璃色の瞳に、『一緒にお祝いしましょう?』と言われては流石のキレネンコも重い腰を上げるしかあるまい。まして、大切な人からの"お願い"。無下にもできず訪れたはいいが…


 小雪舞い散る寒さの中、再びキレネンコは溜め息をつく。

 赤い双眸が見遣った視線の先。はしゃぐプーチンの隣には、物覚えの悪い馬鹿な看守と、しつこい民警二人組。いつの間に現れたのか、忌ま忌ましい双子の片割れの姿まで。

 「キレネンコさ~ん!もうすぐカウントダウンですよ。こっちにきてくださ~い!!」

 大声で名を呼ぶプーチンにキレネンコは三度、深い溜め息をつきそちらへと歩を進めた。


 『早く!早く!』急かすプーチンに引きずられる様にキレネンコが輪の中に入ると、同時に始まるカウントダウン。


 「トゥリー!」
 「ドゥーヴァー!」
 「アジーン!」
 「ノーリ!С НовЫм Годом!!



 カラン、カランと新しい年を知らせるワシリイ大聖堂の鐘が鳴り響き、色とりどりの大輪の花火が夜空を舞い花を添える。沸き上がる歓声と嬌声。交わされる新年の挨拶。

 「キレネンコさん、С НовЫм Годом。今年もよろしくお願いしますね?」

 傍らに立ちニコッとキレネンコを見上げるその瑠璃色の瞳。優しい色を讃えるその瞳にキレネンコも小さな声で囁くように呟いた。





С НовЫм Годом
ス ノーヴィム ゴーダム



 「飲んでいいんだよな?」

 「…ボリス、俺達まだ勤務中」

 「いいじゃねぇか、一杯くらい祝い酒だぞコプ!」

 「ダメなものはダメ!ほら、任務に戻るよ」

 「……な、なに睨んでんだよ!俺がここにいちゃ悪いのか!!」

 「……お前も失せろ」

 「…なっ?!」 

 「まぁまぁ、キレネンコさんもカンシュコフさんも落ち着いて」

 「それより早くしろ…酒がまずくなる」



 『あ、そうですね。それじゃあ、かんぱ~い!!』



「ちょっとまった!」

「「お前は飲むな!」」

 



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2011.01.01
『World's End』の新年企画フリーから持ち帰らせてもらいました!うわー、オールキャラ!総出な作品は珍しいですよね!凄いっ!
どれだけ人が一杯居てもキレ様の目はプー一直線!プーからの明けましておめでとうも一番にキレへ~。
でも、どんなに甘くなっても酒だけは飲ましてくれませんね。(笑)皆で止めにかかる。双子が息ぴったりなのに、さり気に胸キュン!
素敵な赤緑&さり気に運狙&ちょっと可哀想な看守&気ままな弟の素敵な新年の幕開け、ご馳走様でした!
月影さんありがとうございましたー!

ちなみに、新年企画のイラストもごっそり攫って参りました。(ぉぃ)宝船の気分だぜ!


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