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作者様:『World's End』 月影 眞様


こちら(οτгрузка единицЯю ночью)の続きです!
――――――――――



瑠璃色の硝子玉

 
 新しい年を迎えたばかりの街中は、キラキラと光り輝き、いつも以上に浮かれた人達で溢れ賑わいをみせていた。

 そんな街角。いつもなら光の宿らない無感動な赤い眼。その眼に僅か光を燈し、何かを求めて喧騒の中歩くキレネンコ。

 あっちの店を覗いてみたり、こっちの店を覗いてみたり。キレネンコにしては珍しい行動。きっとキレネンコを知る人間がこのキレネンコの姿を見かけたら、『天変地異の前触れだ』などと騒ぎ立てるだろう。それくらいキレネンコは街中を歩き回っているのだ。しかもその理由は、自分のスニーカーのためではなく、一緒に暮らす瑠璃色の瞳を持つ人物のため。


 キレネンコ自体、クリスマスなんてものはどうでもよかった。いや、そもそもこうしたイベント事自体どうでもよい。街中は馬鹿共達で溢れ返り、やれヨールカが綺麗だ、ジェット・マロースが来ただの騒ぎ立てる。煩いのも煩わしいのも嫌いだ。

 それでもこうしてキレネンコが歩き回るのには理由があった。

 それは今朝方のこと。
今日のクリスマスのために忙しく準備をしているプーチンに、またしても朝早く訪れた片割れが放った一言。


 「お前、まだジェット・マロースを信じてるんだろ?」

 呆れとからかいを含んだその言葉に『もう、そんな子供じゃありません!』とむきになって否定したプーチン。

 それでも直からかう片割れに『そんなことばかり言ってたら、キルネンコさんの所にジェット・マロースさんは来ないんですからね!』と言い返す。

 それを聞いた片割れが心底愉しそうに声をたてて笑った。それに連れる様にプーチンも笑う。

 その楽しげな笑顔にキレネンコの好奇心が擽れる。

 この顔は、ジェット・マロースからプレゼントを貰ったらどんな顔をするのだろうか?その大きな瑠璃色の瞳が、馬鹿でかいヨールカを見上げたらどうなるのだろうか?花のように綻ぶのだろうか?それとも砂糖菓子のように甘く蕩けるのだろうか?

 そんな知的好奇心。むしろ探究心と呼ぶ方が相応しいのかもしれない感情。けして、街中の馬鹿共とは違う。そう言い聞かせながらキレネンコは、店から店へと渡り歩く。

 その顔が、花が咲き綻ぶ様を見てみたいから―――


 そしてキレネンコは、引き寄せられる様に一件の店の前で歩みを止めた。そこの店は、キレネンコの今までの人生の中で縁がなかったもの。これからも一生入ることがないだろうと思っていた店。けれどウィンドーに並べられたそれを見た瞬間。キレネンコは躊躇うことなくその古びた木造仕立ての扉を押し開いた。




 キレネンコが街中をさ迷い歩いているその頃。




 キルネンコは動かぬ車中にいた。長い脚を組み替え、窓辺を指先でトントンと叩く。その様は渋滞に嵌まり苛立っているかのように見えるが、実はそうではない。

 今朝立ち寄った片割れの家。
そこに片割れと一緒に住まう同居人から『今夜のクリスマスパーティー、キルネンコさんも来てくださいね』と笑顔で言われたからだ。

 基本キルネンコもクリスマスなど興味はないが、あの瑠璃色の瞳を持つ同居人は興味深い。それに折角の招待だ。無下にするわけにもいくまい。

 さて、手土産はどうすべきか?それをキルネンコは考えていたのだ。

 馬鹿でかいヨールカでも贈るか?いや、あの場所にそんなものを立てたら悪目立ちしてしまう。そうでなくとも趣味の悪い建物。忽ち観光名所にされてしまう。

 では、食い切れないほどのご馳走か?しかし、あの同居人は朝早くからなにやら仕込みをしていた。きっと今夜のためのものだろう。そんなものを用意すればアイツの料理が食べられなくなる。それは避けたい。これも却下だ…

 そもそもアイツは、そこいらに咲いている花や落ちている石ころをプレゼントされても怒ることはないだろう。むしろキラキラと瞳を輝かせ、溶け出したヌガーの様に甘い笑顔で『ありがとうございます!』と言うのだ。アイツはそういう奴だ。

 ハァ――と短い溜め息をつきキルネンコは窓の外をみやる。動かぬ車。纏まらぬ思考。窓辺を叩く指音がどんどん早くなるにつれ、車内にも厭な緊張感が走る。

 ――トン、トン、トン


 その音に、いつ罵声を浴びせかけられかと固唾を呑んで待ち構える部下達。

 トン――――――

 急に音がやんだ。
背を伝う冷汗を感じながら部下達は罵声を待った。が、それは一向に訪れない。
不思議に思った部下の一人が、恐る恐るボスを見遣るとボスはじっと窓の外を眺めていた。窓の外に見えるのは、灰色の空と行き交う人々。そして、古ぼけた一軒の店。

 その店をじっと見つめていたキルネンコが、罵声の代わりに運転席の背もたれを蹴り飛ばす。驚いた運転手がブレーキを踏み込めば、キルネンコが満足そうな顔を見せ車から降り立つ。

 唖然とする部下達。鳴り響くクラクション。しかしキルネンコはそんなものお構い無しに、その古ぼけた一軒の店へと歩を進めた。






 小さいながらも綺麗に飾り付けをされたヨールカと、隣に並ぶジェット・マロースの人形。

 窓辺に並んだ揺らめくキャンドル、暖炉のパチパチと燃える音。

 食卓には温かな湯気をたてた食事が並べられ、食べられる時を今か、今かと待ち構えている。

 まさにクリスマス。


 今だパタパタと慌ただしく動き回るプーチンに、キレネンコとキルネンコは"いつプレゼントを渡そうか"と考える。

 プレゼント自体はたいした物ではない。でもきっと喜んでもらえる。だったらさっさと渡してしまえばいいのだが、如何せんこの双子の片割れが居る前では死んでも渡したはくない。

 ならばこの片割れが居ない隙に渡すか?と考えてみるが、どうにも隙をみせてくれない。困ったものだ…と吐き出された溜め息が室内に響く。

 それに気づいたプーチンが準備をする手を止め、赤い双子を振り返った。

 「キレネンコさんもキルネンコさんも溜め息なんてついてどうしたんですか?」

 キョトンと向けられる瑠璃色の瞳。プーチンの言葉に片割れを見遣れば、同じ様にこちらを見ている。ぶつかり合った深紅の眼はどこか諦めを滲ませていた。


 「「ハァ……」」

 又しても同時に吐き出される溜め息。

 「あ、あのっ……!」

 溜め息をつき肩を落とす双子に、何か言わなくてはとプーチンが口を開こうとしたその時、目の前に二つの小さな箱が差し出された。

 クリスマスカラーの包装紙に、金色に輝くリボン。全くそっくりな双子の様なその二つの小箱。


 「僕に…ですか?」

 こてん、と首を傾げるプーチンに双子の赤い目が頷く。

 プーチンは、そっと箱を受け取りゆっくりと包み紙を広げた。勿論、この双子が折角のクリスマスに喧嘩をしない様、二つ同時に―――


 「ふわぁ~……」

 箱を開けたプーチンが感嘆の溜め息を零す。そして壊れ物を扱う様な手つきでそれを取り出した。


 プーチンの掌に乗せられた二つの髪飾り。プーチンの瞳と同じ瑠璃色をしたそれは、光に翳せばキラキラと光輝き、瑠璃色の硝子玉の中に赤い星をちらつかせる。それはまるで宇宙のよう―――


 声にならない声を上げ、それを楽しげに眺めていたプーチンが、双子を振り返りニッコリと微笑んだ。


 その笑顔は双子が想像していた以上。砂糖を煮詰めて作ったタフィーよりも、蜂が群がる極上のハチミツよりも蕩けていて、まるで甘い薫りが漂ってきそうなほど。


 「ありがとうございます。大切にしますね!」



 礼を言うプーチンに赤い双眸がゆるりと揺らめいた。





瑠璃色の硝子玉




(でも二人とも同じものを選んじゃうなんて、やっぱり双子なんですね!)
 



――――――――――
2010.12.20
『World's End』の月影 眞様がリンクの相互文下さいました!う、うおおおっ……なんて大盤振る舞い!
しかもX'masフリーで配布されている小説の続編!クリスマス本番双子緑でございます!
プー……君はまだジェット・マロースを信じてるんだねっ……!な、なんて純真で可愛いんだ!!!
(※ ジェット・マロース=サンタクロース。あとヨールカ=ツリー、だそうです。月影さんが説明してくださっていました。勉強になる!)
イベントごとにとことん無頓着なくせに、愛するプーのために双子も張り切っております。二人で赤いジェット・マロース!
そしてプーチンのとろっとろに蕩けた極上の甘い笑顔っ!!!(鼻血)もう、想像するだけでは、こっちが溶けそうですっ……!
前回のクリスマス前夜に引き続き、心温まるお話でした。月影さん、本当にありがとうございます!
これからもどうぞ、よろしくお願いします!!!


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